2024年11月28日
【障害児・者への性暴力対策】(2024年12月定例議会 一般質問)
一般質問の報告その2です。
性暴力は、撲滅せねばなりません。
よこすか未来会議としては、これまでも性暴力を起こさないことを求めてきました。
しかし、直近の数年間でも、本市職員による職員に対する性暴力※1や、学校における教員から生徒に対する性暴力※2が発生してしまっています。
※1 2024年2月29日 職員の懲戒処分について
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/1220/nagekomi/20240229.html
※2 2022年12月22日 横須賀市立学校教員及び校長に対する懲戒処分について※資料リンクなし
○横須賀市立中学校 教諭1名・懲戒免職
○横須賀市立中学校 校長1名・減給10 分の1(1か月)
今回の質問では、障害児・障害者への性暴力を無くす、という観点から問いました。
障害児者への性暴力は、障害者虐待防止法に基づく通報等によって「障害者虐待」として把握されます。神奈川県の障害者虐待の状況報告において、性的虐待の認定件数は毎年10件程度見られ、横須賀市でも直近では令和5年度に1件が認定されています。
残念なことですが、市内で、実際に被害が発生しているのです。
さらに、障害者の場合、性被害を被害と認識するのに時間がかかったり、被害を訴えても障害の特性につけこまれるなどして被害が埋もれてしまう事例もあり、特に慎重な対策と、状況把握が重要であり、障害児であれば、なお一層の配慮が必要です。
こうした背景もあり、今回は、障害児・障害者への性暴力を無くす、という部分を切り出して、質問しました。
■障害児の性被害の場合、対応する行政窓口が 障害福祉課・警察・児童相談所 の3つとなる
近年、性犯罪を巡る刑法、刑訴法等の改正や、性暴力対策強化の方針の発出、各種相談先の整備など、性暴力を絶対に許さないという社会機運は、ようやく、高まりを見せています。その中で、障害児・者に対する性暴力の深刻さにも、目が向けられています。
●性犯罪・性暴力とは(内閣府男女共同参画局)
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/index.html
●性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針(性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議 2023年)
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/pdf/kyouka_02.pdf
●障がい児者への性暴力に関するアドボカシー事業(NPO法人しあわせなみだ 2018年)
https://www.moj.go.jp/content/001310586.pdf
●障害の特性につけ込まれ・・・ 埋もれた障害者の性被害(NHK 2022年)
https://www.nhk.or.jp/minplus/0026/topic045.html
特に今回念頭にあったのは、障害児が性被害に遭うケースです。
障害児は、「障害があること」に加えて、「こどもであること」によって、一層、困難な状況に置かれかねません。さらに、大人と比べ、こどもの性への配慮は置き忘れられがちです。
また、対応する行政窓口が 障害福祉課・警察・児童相談所 の3つとなります。情報の入り口が3つとなることで、より手厚く相談に応じ、より敏感に性暴力の存在に目を光らせることができる一方で、3者の情報連携が薄ければ、どこかで性暴力のリスクの見落としが発生しえます。
1件の性被害の影には、無数の性被害疑いが必ず隠れています。情報連携が、特に重要な分野なので、ここにこだわっています。
これらの背景を踏まえ、
・障害児・障害者に対する性暴力を防ぐための対策の一つとして、本人の意思に反する異性介助がなされないよう、障害福祉サービスにおける同性介助が行える体制づくりをすること
・「障害者であり、性被害者である」という二重に困難な状況に置かれる方々に対する相談体制・情報共有を手厚いものにすること
・犯罪被害者等基本条例等を踏まえつつ、適切なケア・支援に被害者がつながるよう、体制を整え、情報周知を徹底すること
を問いました。
■「性犯罪」は「性的虐待」にもカウントされ、引き継がれているか?
主な答弁は、
・職員数が少ない障害福祉サービス事業所では、同性介助の体制づくりが難しい状況。各種運営指導、ケースワークなど、様々な場面で事業者の同性介助の実施状況を確認しつつ、事業者の声も聞きながら利用者の意思を確認すること、同性介助者がおらず希望に沿えない場合は利用の可否について利用者に事前に確認することなどに取り組む。
・ 警察からの通報は、虐待の疑いの段階でも入ってくる。職員と警察官が一緒に虐待の事実確認等を行うケースも多数ある。ただ、犯罪性が高く、捜査への影響を考慮して(市障害福祉課への)情報提供を警察が控える、また「市の方は少し動くのを待ってくれ」というような具体的な話もいただくことがある。そのため、引き継ぎといった形はとっていないが、個別のケースにおいて必要に応じて警察から通報や情報提供はなされてるとは考えている。
といったものでした。
今回、質問に当たって調べる中で、障害児者が性被害に遭うケースで、統計に計上される障害者への「性犯罪」と「性的虐待」が必ずしもイコールにならないことに思い至りました。
この点が、答弁での「犯罪性が高く、捜査への影響を考慮して(市障害福祉課への)情報提供を警察が控える、また「市の方は少し動くのを待ってくれ」というような具体的な話もいただくことがある」に関連してくるわけですが、
その犯罪者を、たとえ警察で逮捕したとしても、現時点の法制度では、障害福祉サービス事業所側では、その犯罪者のその後を追いかけることはできません。
繰り返しになりますが、1件の性被害の影には、無数の性被害疑いが必ず隠れています。
情報連携が、特に重要な分野です。
今後、日本版DBS※3がどのような形で導入されるかは国レベルで議論の途中ですが、自治体レベルでも、できることから着実に進めて、防げる被害は防ぎ、起きてしまった事件には丁寧に対応し、その後も含めて関係者間で連携してほしいと思います。
(※3 日本版DBS : 性犯罪を防止する措置の一つとして、対象の事業者に対し、子どもに接する仕事に就く人について、性犯罪歴の確認を義務付ける制度)
https://www.asahi.com/sdgs/article/15430331
ーーー質疑の書き起こしーーー
■2 障害児者への性暴力
(1)障害児者への性暴力対策の現状について
●上地市長
横須賀市では、障害者対策、虐待防止法に基づき、障害福祉課内に障害者虐待防止センターを設置し、 虐待防止のための周知啓発、虐待通報の受け付け、虐待の事実確認及び虐待の認定、 虐待被害者への相談支援などを行っています。
障害者虐待防止センターの相談窓口は、ホームページなどで市民や関係機関に周知し、性的虐待の疑いなどの通報や相談があった際には、 当事者の気持ちやプライバシーに十分に配慮しながら、慎重かつ丁寧な事実確認に努めています。
(2)障害児者に関わる障害福祉サービス事業所における、性暴力対策の現状について
●上地市長
次に、事業所における対策についてです。
障害者虐待防止センターでは、障害福祉サービス事業所に対して毎年、事業所の管理者や職員向けに様々なテーマで研修会を開催し、その中で、性暴力を含めた障害者虐待の内容、事業所の職員に障害者虐待の通報義務があることやその通報窓口を周知しています。
また、研修会の場において、利用者の立場にとった支援や職場内で不適切と思われる支援を職員会で指摘し合える体制づくりについてグループワークなどを行い、職員の意識の向上を図っていますので、性暴力についてもテーマにしたいと思います。
(3)本人の意思に反する異性介助がなされないよう、障害福祉サービスにおける同性介助が行える体制づくりについて
●上地市長
次に同性介助についてです。
議員ご指摘の通り、指定基準の解釈通知については、同性介助の努力義務化が図られ、横須賀市としても改めて障害福祉サービス事業所に向けて周知を行っているところです。
しかし、職員数が少ない障害福祉サービス事業所において、同性介助の体制づくりが難しい状況であると認識しています。各種運営指導、ケースワークなど、様々な場面で事業者と接点があるので、同性介助の実施状況を確認しつつ、事業者の声も聞きながら利用者の意思を確認すること、同性介助者の欠勤等により希望に沿えない場合は利用の可否について事前に確認することなど、具体的な対応策を示しながら同性介助の意識の醸成を図り、 同性介助に関する利用者の意向を踏まえた支援提供体制が確保できるように取り組んでまいりたいと思います。
(4)特に、障害児に関わる障害福祉サービス事業者に対し、性への配慮と、同性介助を推進することについて
●上地市長
次に、 障害児の同性介助についてです。
大人の性に比べ、子供の性への配慮が不足しがちになることは私も同感です。障害児に関わる障害福祉サービス事業所に対してより丁寧に周知等を行うとともに、保護者への周知も大切だと感じますので、 保護者への情報提供のあり方についても考えてまいりたいと思います。
また、障害児に関わる障害福祉サービス事業所に対しては、プライバシー保護のためのパーテーションや保護者からの確認依頼にこたえるためカメラの設置など、ハード面においても性被害防止の取り組みを進めてまいります。
(5)「障害者であり、性被害者である」という二重に困難な状況に置かれる方々に対する相談体制・情報共有を手厚いものにすることについて
●上地市長
次に、相談体制と情報共有についてです。
障害者であり性被害者であるという2重の困難な状況に置かれている方々に対しては、 当事者の思いに寄り添いながら、できるだけ寄り添いながら、プライバシーや名誉を尊重し、2次被害や再被害の防止に取り組む必要があるために、様々な支援機関が密接に連携していくことがとても重要であると思います。
被害を受けられた方が適切なケア・支援につながるように、相談を受けた市のケースワーカーが中心となり、 関係機関とのケース会議を丁寧に重ねながら、手厚い情報共有と連携が行える、相談体制づくりに努めてまいります。
(6)犯罪被害者等基本条例等を踏まえつつ、適切なケア・支援に被害者がつながるよう、体制を整え、情報周知を徹底することについて
●上地市長
次に、適切なケア・支援についてです。被害を受けられた方が適切なケア支援につながるようにするためには、被害者本人だけでは、支援者が被害者本人の異変に気づいたり、支援体制に、支援制度について理解していることが大切であると思います。 今後、障害者施策検討連絡会など障害者団体を通じて、障害のある方やそのご家族に対し、犯罪被害者等相互支援窓口や支援の内容を周知してまいります。
合わせて、障害のある方やそのご家族の相談を受けている立場にある障害者相談サポートセンターや相談支援事業所などの支援機関に、機関に対しても同様の周知を行い、 行政の支援窓口との連携を深めていきたいと思います。以上です。
ーーー以下、2問目ーーー
▽加藤ゆうすけ
ぜひよろしくお願いします。続いて、障害児者への性暴力の方に移ります。
丁寧に取り上げなければいけないテーマだなと思っておりまして、やはり性暴力対策の話になると、必ずその周辺の反応として「そんな目で見られるなんて心外だ」っていうような反応が。要するに、性犯罪とか性暴力を犯しうる存在として前提で見られるのはおかしいじゃないかっていう反応はその通りだと思ってます。学校に防犯カメラを、とかっていう話も、やはり教職員の方からすると、何かするかもしれない存在として見られてるのかっていう気持ちにもなりますから、そこは、高邁な精神で職務に当たられてる方々にとっては、やはり少し受け入れられないという感情も理解をしています。
で、だからこそ注意してみていかなければいけない部分が多いのかなという風にも思っていて。要は、その、職員だから絶対大丈夫なはずとなりがちなところを、もし、その上で何かが起きてしまったら、 じゃあそれを自分で打ち明けにくい人って誰かって言うと、先ほどから障害者の方が、性暴力にあった時にそれは打ち明けづらいし、打ち明けても聞いてもらえなかったりということがあるし、それがお子さんの場合はさらに難しかったりという、非常に実態が見えづらいっていうこと。それから、(性被害が)一度起きてしまうとやはり取り返しがつかないダメージを心身に与えてしまうということ、そういった点を踏まえて今回質疑をしているところになります。
その中で1つ、防止策の1つとして、本人の意思に反する異性介助がなされないようにするというのを今回進めてほしいと思っているんですけれども、特に子供の場合ですね、そもそも同性介助を希望できることを本人が知らなかったり、本人が嫌がってることを周囲が気づかなかったり、意思確認が難しい部分、やはり慎重に行ってほしいと思うんですね。
なので、この、本人の意向の確認に関して、市内の障害福祉サービス事業者がどう取り組んでるかですとか、 その対策という点で、市長がどういう形で報告を受けていらっしゃるのかなっていうところを伺いたいんですが、いかがですか。
●藤崎福祉こども部長
お子さん、ご本人が同性介助を求めているかどうか、また本人も気が付かないケースが多々あると思います。そういったケースの場合には、周囲がそれを感じ取る力はとても大事だと思っています。
事業所については、今の社会の移り変わり、時代の移り変わりの中で、そういったことは必要だということはストレートに伝えていこうと思っています。また、実地指導ですとかケースワークの際にどのような形で取り組んでいますかということを聞きながらですね、 自治体の現場感ですとか意識の確認をしていきたいと思います。
それと、保護者の方たち、こちらの方には、単純にいいだ悪いだという問題じゃないので、 どういった形で支援を受けていくのか、ご本人の気持ちに寄り添うとか、今の時代、同性介助を求めてもいいんだよだとか、 どういった形で、ストレートに言うわけには多分いかないだろうなと思いながらですね。伝え方については、ケースワーカー等々もですね、話し合いながら慎重に伝えていきたいなと。で、意識の醸成を全体として高めていきたいなと考えております。
▽加藤ゆうすけ
同性介助の体制作りのところでは、先ほど、職員数が少ない状況で同性介助を徹底することの難しさというのは、もちろんそれは私も承知をしています。
それを踏まえた上で、先ほどの答弁の中で、通知にもあったことではあるんですが、どうしても希望に沿えない場合に利用するかどうかっていうところもちゃんと確認するっていうことは、確保できるようにしますとお答えいただいたんで、そこは徹底いただければなという風に思います。
そして、障害児者への性暴力が発生した後の流れとしては、 性犯罪としての警察があって、性的虐待としての障害福祉課の認定があって、子どもの場合は児童相談所での把握というのも加わりますけど、この、特に警察との連携という部分についてですね。障害者が性犯罪の被害者として警察が認知した後に、障害福祉課が性的虐待としても把握をして、そのことを課として引き継いでいく体制になってるかというところについてはいかがですか。
●藤崎福祉こども部長
性的虐待に限らないんですけれども、障害福祉課の虐待の通報件数の7割が警察からになっております。
で、警察からの通報は、虐待の疑いの段階でも入ってくる、行われてます。そして、職員と警察官が一緒に、事実確認等ですね、行うケースも多々ございます。
ただ、犯罪性が高くて、捜査への影響を考慮して情報提供を警察は控えてる、また、今、市の方は少し動くのを待ってくれというような具体的な話もいただくことがあるのは承知してます。
ですので、引き継ぎといった形はとっていないんですけれども、個別のケースにおいて必要に応じて警察から通報や情報提供はなされてると私どもは感じております。
▽加藤ゆうすけ
捜査の状況に応じては、やはりその情報を、たとえ市の障害福祉課であってもあまり詳細に伝えることが支障になるという警察の気持ちは確かにそうだなと思います。そういう例もあるんだと思います。
ただ一方で、性犯罪の性質を考えた時にですね、 1件あった時に、じゃあ他に疑わしき事例が何件あるんだっていうところが、やはりとても重要になってくる犯罪の1つだと思いますんで、やはり全数を障害福祉課が把握できるようにしておくというのは、 警察との連携の上ではとても重要なことなのかなと思うんですね。
市長、ヒヤリ・ハットってよく聞くと思いますが、1件の重大事故の影に、無数の、いろいろな危ないことが起こったけど、災害には至らなかったっていうことがあるという話をよく労働災害の防止で聞くと思いますけど、それに近い感覚ですよね。1件、性犯罪のようなことが起きた場合、無数の疑わしき事例が周りにあるかもしれないという可能性を含めて、障害児者に対する性暴力対策としては連携を考えていただきたいので、改めて市長、いかがでしょう。
●上地市長
おっしゃる通りで、すごくデリケートな問題だけれど、周りにあるという可能性って十分あるので、しっかりと警察と連携をしながら、デリケートな問題でありますが、個々の事案、その可能性、ヒヤリ・ハットではありませんが可能性も含めて、どういう形で警察と連携をし、その事案を残していくかっていうことは検討していきたいという風に思います。
▽加藤ゆうすけ
ぜひよろしくお願いします。
これで最後になりますが、「被害者であること」に加えて「障害があること」という2重に大変な状況、ここにさらに「女性であること」とか「子供であること」とか加わっていくとなお一層大変になることというのは、 よく最近、交差性、インターセクショナリティーとか言うんですけど、多様な要素がですね、それぞれ別個にあるんじゃなくて、相互に関係してその人の経験とか状況をこう作っていくので、それがより複合的で困難な状況を生んでしまうということにもなり得るという視点でよく分析をされるんですが、この交差性という視点を持ってやはり被害者を生まないように対策していくこと、 適切なケア・支援に被害者をつないでいくことについて、最後、市長のご所見いただいて終わりにしたいと思います。
●上地市長
おっしゃる通りでね、私、七重人格っていう方のケアに入ったことが実はあって、かなり難しい状況で、今言った交差性の、もうひどい(状態の)かただったんで、小さいころ幼児虐待に遭って、性被害に遭って、(ケアの時点では)大人なんだけど、ドラマー・ミュージシャンだったんだけど、もうそれをいろいろ様々な、精神も病んだりしてたところをお聞きして、解決のために1年間奔走したことがあって、 それと、それ本当に、なんというか、残酷なものだということをよく理解してますので、そのために、もちろんそういうことが起きない社会を作るのは全力をあげなきゃいけないけども、それに向けて何が行政ができるかっていうことはこれからも考えていかなきゃいけないという風に思っていますので、それに向けては福祉こども部と一緒に全力をあげていきたいという風に思います。