2019年12月10日
【ジェンダー平等は、まだ遠いのかもしれない】(2019年11月29日本会議 一般質問より)
【ジェンダー平等は、まだ遠いのかもしれない】(2019年11月29日本会議 一般質問より)
加藤ゆうすけの一般質問に関する報告、その3で最後です。
3つ目の質問は、【誰もが自分らしくあり続けられるまちへ】と題して作成しました。
もしかしたら覚えていてくださったかたもいらっしゃるかもしれませんが、そうです、選挙時に掲げた項目のひとつです。
※【加藤裕介の政策集】2019年4月版 をご覧ください
今回は、いわゆる女性活躍の推進の中でも、市職員に占める女性の比率をいかに増加させるかについて、質疑しました。
質疑の結果としては、
●クオータ制は、(まだ)導入しない。
●この課題の本質は、市職員の女性が昇進しようとしないことにある。
●コンピテンシーモデルをつくり、人事評価を明確にしたい。
という感じでした。
まずは質疑の内容を以下お届けします。
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■3 誰もが自分らしくあり続けられるまちへ
(1) 採用試験受験者における女性割合が「横須賀市女性活躍推進プラン」の目標値まで遠いという現状に対する認識について
●市長 指摘の通り、本市の2018年度の採用試験受験者の女性割合は32.7%、2019年度は36.3%(10月27日時点)で、若干上昇している者の、2020年度までに50%という目標達成には、さらなる取り組みの推進が必要である。受験者の女性割合拡大のために、大学生を対象とした説明会の開催、女子大学への積極的勧誘も行っている。女性の受験者割合が低い土木職などの技術職では、理科系大学などで説明会し、本市の技術職の魅力を伝える。発信についてはパンフレットやwebサイトで女性職員の生の声を紹介し、女性が魅力を感じる職場をPRするなどの取組みをおこなっている。今後、SNS等様々なツールを活用した採用情報の発信に力を入れるとともに、インターネットによる受験申し込みなど、より受験しやすい環境を整える。
(2) 課長補佐選考試験が廃止された後の、課長級以上の女性割合を高めるための今後の方策について
●市長 女性管理職の割合を増やすことは、女性の視点による政策実現、行政サービスの質向上のため重要である。まずはプランに掲げる目標値に向けて実効性ある取り組みをしたい。これまで、2016年3月に女性活躍推進プランをつくり、女性が活躍できる環境づくりに取り組んできた。2019年7月1日時点、本市の課長級以上の女性管理職の割合は10.4%で、平成27年度の6.1%から4.3%向上したが、プラン目標値には及ばない。今年度から課長補佐試験を廃止したが、今後、勤務実績に基づき評価し、より人物に着目し、登用する。仕事と育児、介護との両立など職員が抱える悩みを相談しやすくしたり、管理職へのロールモデルを示すなど、女性の力を発揮できる職場環境を整え、意欲と、能力ある管理職を積極的に登用したい。
(3) ポジティブ・アクションとして、本市の管理職登用にクオータ制を導入し、課長級以上の女性割合を確保することの是非について
●市長 クオータ制にはメリットも、デメリットもある。導入の是非を判断するためもうしばらく検討したい。本市の課長級以上の女性割合はここ3年間横ばいで、県や全国平均と比べても低いので、割合を増やすにはこうした制度も有効であると感じる。しかし、女性職員課長補佐試験受験率が20%にとどまり、6割の職員が2年以上受けていない。この要因は、職責が重くなることへの不安感・仕事と生活の両立への影響だと思うが、真に実力を発揮し活躍してもらうためには、こうした不安要素を払しょくし、自らの意志で管理職を望むようにしていかなければならない。立場が人を作るという言葉があるが、答弁の通り、より人物に着目して登用したい。まずはこうした結果も見ながら、引き続き女性割合の増加に取り組みたい。
【■3 誰もが自分らしくあり続けられるまちへ 関連部分 2問目】
▽加藤 現状についての理解は先ほど答弁いただいた通り。目標値から遠い、という現実について質疑していきたい。市長は、「男女平等は当たり前の話」とおっしゃると思うのですが、これまでの取組みの結果が、現状だと受け止めるならば、やはりそれは、女性活躍推進を妨げる、目には見えづらい障壁があるのだと考えます。それは、先にあげたとおり、「能力があれば自然と活躍できる」という意見などの形をもって、ふとした瞬間に現れるわけですが、やはりその部分は、制度化・システム化して採用・登用していかないと、障壁に阻まれるのだと思います。
今回、課長補佐試験も廃止され、人物を見極めての推薦ということなのだと思いますが、試験というある意味わかりやすい指標での登用を廃止するこのタイミングは、かえって女性活躍推進への取り組みが後退しかねないと懸念をしています。こうした点、男女共同参画を所管する市民部と、人事を所管する総務部の連携については、市長からどのように指示されていますか?
●市長 本質はそこではないと私は思っています。人権ではなくて、横須賀市職員の女性が上にあがろうとしない。たぶんそれが一番大きなことではないかと思っています。一番大きな理由は、申し上げにくいんですが、議会対策です。これを申し上げていいのかわからないけれど、過去8年いろいろなことがあって、女性は委員会に出て、様々なことがあるのを一番嫌がると。いい悪いは別として、そういう障害を除いていかねばならないという意味も含めて、これからは人材の登用においては見極めて、私が試験ではなくて、こういう人材こそ新しい横須賀に必要であろうと。
もう一つは、横須賀をどういうまちにしたいのかという全体の流れの中で考えるべきであって、クオータ制であるとか、人材だとか、女性活躍社会、よく一般論で言われる女性活躍社会というのは、一般論ではわかるけど、ここは横須賀であって、横須賀がどういうまちで、横須賀の職員がどうあるべきで、横須賀をどういう風にしたいんだと、そういう思いの中で、そこに女性が参画すればいいだけの話である。原理原則論に立ち返るべきであって、それが男女同権だというような話には、私は至らないと思っています。
▽加藤 議会対策という言葉には耳が痛いんですが、やはり女性がなかなか意欲的にあがろうとしない側面は、あがろうとしない側面ももちろんそうですが、そう思うに至らない原因が、いまの議会対応という部分もそうですが、いくつかあると思います。この点については今後も研究を深めていただいて、そのあとですね、課長補佐選考試験が廃止され、上長の推薦により登用される女性には、今もあることですが、「女性だから上がれたんだ」というような心無い言葉が決してかけられることのないように、一層ご配慮はいただきたい。課長補佐選考試験が廃止されたあと、課長補佐に登用される職員が、自分がなぜ登用されたのかを、他に示すことのできる客観的な指標づくりの予定はありますか?
●市長 実は、私議員の時から言っているんですが、コンピテンシーモデル、どういう人が理想なのか具体的なモデルをつくれと言ってきた。その時は相手にされなかったが、これからそういうモデルを作り、具体的にこういう状況にはこういう考え方を持ちこういう風に立ち振る舞うという、具体的なモデルをつくり、そこに向かってどのようにいるか、具体的につくらないともう無理だと私は思ったので、そういうことをやりながら研究模索しながら、今みたいなことを登用していきたいと思います。
▽加藤 コンピテンシーモデル、具体的なモデルづくりと、大変納得しました。これで最後の質問とします。誰しもが多かれ少なかれ、偏見、英語でバイアスといった方がわかりやすいかもしれませんが、持っているわけです。正常化の偏見のお話は昨日市長もされていましたが。この、人間のもつバイアスに対しては、意識を変えるより、まず制度を変えて、行動を変えてしまった方が有効だと思います。改めて、女性活躍推進には、具体的な制度化・システム化・客観的な指標など、誰もがわかる形で一層の推進をいただきたいと思いますがいかがですか。
●市長 私はあらゆる差別が嫌いで、取り立てて私の中には男女の区別は無い人間なので。おっしゃる意味はよく分かるが、指標は、そういう社会でなければ、客観的にどう思われるかということ、ということの意味も、私はよくわからない。それが女性活躍社会じゃないといわれるのもわからない。ただ、それによって、可視化によって納得する人がいるならば、それはそれでやっていかねばならないだろうと思う。その意味で、おっしゃていることを少しでもやらねばならないと思っている。
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■ジェンダー平等は、まだ遠いのかもしれない
今回の質疑で、「本質はそこではないと私は思っています。人権ではなくて、横須賀市職員の女性が上にあがろうとしない。たぶんそれが一番大きなことではないかと思っています。」と市長から答弁があったのは、かなり残念でした。
上地市長は、直接お話されているかたはお分かりになると思いますが、いつも質疑でご覧いただくように、なんというか、誰にでも分け隔てなく接する面倒見の良さというか、勢いの良さというか、そういう気持ちの良さ、明るさを持っているかたです。
ですが、執行部の長としての、ジェンダー平等に関する質疑を通じては、時にこの「あらゆる差別が嫌いで、取り立てて私の中には男女の区別は無い人間」(市長答弁より)としての認識により、ジェンダー平等が進みづらくなる部分があると私は感じています。
特に、「好意的性差別主義(benevolent sexism)」[1]のような、一見すると被差別側のことを思いやっているようにみえる行為・態度が、却って被差別側の権利を侵害しかねない状態に陥らないように、十分注意しなければならないと思うのです。(だからこそ、人権・男女共同参画課という部署があり、人事制度の改変においても、人権・男女共同参画課の意見をしっかり聞いてほしいわけです)
だからこそ、「思い」や「覚悟」や「意欲」も大事ですが、それよりも、制度を日々改善し、行動変容を促すことの繰り返しが大切だと思っていて、そのうえで今回はクオータ制(クオータとは、「割り当て」を意味する英語であり、政策・方針決定過程における男女比率の偏りを無くため、一定の比率を義務付ける制度です)を提案しました。
■コンピテンシーモデル
一方で、「コンピテンシーモデル」の話がまた登場したところに、上地市長としても人事制度改革を重要視していることを再度確認しました。(市長は、市議時代からざっと数えてもこの15年間で7回、議会で「コンピテンシー」とおっしゃっています)
「コンピテンシーモデル」とは、ざっくりと言えば「ある職務で、期待される成果を安定して出している人に一貫して見られる行動、態度、判断などでの傾向や特性を列挙して、採用や登用に使えるよう作った尺度」です。1990年代のアメリカで流行し、その後日本にもやってきた考え方です。
明確な基準のもとつけられた評価であれば、評価を受ける側としても一つずつその理由を確認できるので良いとは思いますが、まだ具体的な内容があがってきたわけではないので、推移を注視したいと思います。
[1]
ペーター・グリックとスーザン・フィスクによる。「なぜ女性管理職は少ないのか」(大沢真知子、青弓社、2019年)によれば、「女性を弱いものと見なして保護的態度で接するという好意的性差別は、職場でも頻繁にみられる可能性がある。責任が重い仕事や体力的にきつい仕事を『女性には気の毒だ』と考えて最初から割り振らないというやり方は、好意的性差別にきわめて近いと考えられる。このような行為はむしろ、女性に対する思いやりの一種と見なされて女性から受け入れられやすく、行為者自身にも女性を差別する意識は(少なくとも自覚的には)ないことが多いと考えられる。」とされる。