2024年07月11日
【本来国が見直すべきことを、自治体が独自に先行して行うとしばしば起こること】(パートナーシップ宣誓者に対する住民票の続柄表記)
パートナーシップ宣誓者に対する住民票の続柄表記について、7月1日からパートナーシップ宣誓をされている方のうち希望される方の住民票の続柄表記について、夫(未届)、妻(未届)の表記も選べるようになりました。横須賀市のパートナーシップ宣誓されている方には、その旨のお手紙を送付することとしています。
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0531/310401.html
これは、5月28日に長崎県大村市が、同市の男性カップルに、事実婚関係であることを示す「夫(未届)」と続柄欄に記載した住民票を交付した対応に端を発するものです。園田市長が記者会見し、「自治事務として市の裁量の範囲内で対応した」と述べています。同様の動きは栃木県鹿沼市、香川県三豊市などにも広がっています。
【記事 朝日新聞:ふたりの関係を証明したい 「夫」と書かれた住民票がくれた希望※有料記事 2024年5月29日 6時00分】
https://www.asahi.com/articles/ASS5X3176S5XTOLB00DM.html?oai=ASS792PKLS79TOLB00JM&ref=yahoo
当事者に寄り添った対応であることはもちろん、本来国が進めるべきである結婚の法的平等が進まぬがゆえに、各種の社会保障の面で法律上の夫婦と同じ取扱いが受けられない中、少しでも自治体として障壁を取り除き、住民福祉を増進させようとする極めて重要な判断と、私は評価しています。
ところが、国(総務省)は「実務上の問題がある」との見解を示しています。
【記事:朝日新聞 同性カップルへの住民票交付「実務上の問題あり」 総務省が見解示す※有料記事 2024年7月8日 23時00分】
https://www.asahi.com/articles/ASS784GLXS78TOLB006M.html
その後行われた総務大臣記者会見の概要を見ると、「実務上の問題がある」とした理由は、
・住民票は、住民基本台帳法に基づいて住民の居住関係を「公証する資料」である。
・今回の例は、法律上の夫婦ではないが準婚として各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ取扱いを受けている事実婚の方々について用いられてきた「夫(未届)、妻(未届)」という続柄を、今の段階では受けられないでいるパートナーシップに基づく二人にも使うことになる。
・そうすると、例えば各種社会保障の窓口などで適用の可否を判断することができなくなる。
とのことでした。
【総務省 2024年7月9日松本総務大臣閣議後記者会見の概要】
https://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02001362.html
所管官庁の長として、現行法に基づいた見解としてはそうなのかもしれません。
しかし、大臣は、同時に、国民の代表である政治家でもあります。
むしろ、現在パートナーシップに基づく二人が各種社会保障の面で法律上の夫婦と同じ取り扱いを受けられない根本原因を解決するための意欲を、見せるべき場面だったのではないでしょうか。
なお、我らが横須賀市の上地市長が、昨日(7月10日)記者会見で、実に歯切れよく答えています。
「自治事務の範囲である」
「対応を変更することはない」
「当事者の気持ちに寄り添えば必然」
【記事 神奈川新聞2024年7月11日 住民票の同性カップル続柄を事実婚表記 横須賀市長「自治事務の範囲」】
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1092881.html