2023年12月06日
【ついににんしんSOSカードが学校に置かれる】(2023年12月6日環境教育常任委)
横須賀市は、「にんしんSOSカードの配布」という事業を行っています。
担当しているのはこども家庭支援センターです。
望まない妊娠、思いがけない妊娠、妊娠したかもという不安がある際に、相談できる連絡先が記されたカードを配布・配架するものです。
こうした相談先情報を最も必要としているのは、10代です。
親にも言えず、先生にも言えず、友達にも言えず、自分でどうにかできるお金も知識もなくという状況で、追いつめられるからです。
ところが、まさにその世代が通う中学校・高校に、このにんしんSOSカードが配架されなかったというのが、横須賀市のこれまでの状況でした。
例えば2017年の答弁には、教育委員会・学校側の反応として「学校のトイレににんしSOSカードを置くのは難しい」という中学校長会の反応がみられます:
「●児童相談所長
平成28年度ですと、市内の中学校にできれば本当は生徒に取っていただきたいという趣旨で、今年度考えたのですが、中学校長会とも相談の中で、教育現場の中で、例えばトイレとかに置いて、生徒が直接取っていくというのは、厳しいのではないかというお話もいただきまして、今年度は各中学校の校長、教頭、養護教諭等、配布先は校長に一任しましたけれども、教職員への配布を行いました」
もっとひどいのは、2023年の答弁で、「にんしんSOSカードを置くことは、かえって児童・生徒に性交渉等といったものを勧めるというか、不適切である」という、全く理解不能な教育委員会側の見解が示されたものもあります:
「●児童相談課長
妊娠SOSカードについては、こども家庭支援課と共同で児童相談課も行っていますが、以前、教育委員会とこちらのお話をした際には、やはり学校現場としては、こういったものを置くことは、かえって児童・生徒に性交渉等といったものを勧めるというか、不適切であるということで、教育現場などはそういう話をしています。以前も、この質問を当委員会でもいただいているのですが、学校側には、管理職を中心に、各中学校に10枚ずつ配布しまして、それで管理職の範囲内で、こちらは利用してくださいとしております。」
ーーーーーー
性教育を巡っては、いわゆる【はどめ規定】というものがあります。
妊娠の過程=性交渉 については学校の教育内容で取り扱わないこととする、という学習指導要領の性教育のはどめの規定のことを指します。
日本の性教育が遅々として進まず、望まない妊娠や間違った知識による健康被害に若者が苦しむ原因を作り出している理由の一つとも指摘され続けています。「はどめ規定」があり続ける限り、学校における性教育が、ほとんどタブーに近いものである実態を変えることが難しいわけです。だから、にんしんSOSのためのカードが、「性交渉を助長する」みたいな、話になっていく。
しかし、そうしている間にも、性教育を受けられなかったことにより、悩まずに済んだかもしれない若者は、苦しむわけです。そうした悩み、不安に対して、相談窓口が少しでも増えるように、その思いの一つの表れが、この、にんしんSOSカードなので、だからこそ、とにかく学校においてほしいということが、これまでも議論され続けていました。
ーーーーー
前置きが長くなりましたが、その議論がようやく終わる兆しが見えたのが、今日の答弁でした。「こども家庭支援センターとの協議の中で、今後、各中学校・高等学校に配架するということにいたしました」と、明確に、学校へ配架することが答弁されたのです。
ーーー以下該当部分引用ーーーー
▽加藤ゆうすけ
以前、こども家庭支援センターとの質疑の中で、にんしんSOSカードを中学校のトイレなどに配架することについての協議状況を伺った質疑の際には、「こども家庭支援課と共同で児童相談課も行っていますが、以前、教育委員会とこちらのお話をした際には、やはり学校現場としては、こういったものを置くことは、かえって児童・生徒に性交渉等といったものを勧めるというか、不適切であるということで、教育現場などはそういう話をしています」との状況だったのですが、その後教育委員会としての認識に変化はあったのでしょうか?
●保健体育課長
それまでの経緯というところでは、以前にそのように教育委員会が答えたという認識はあるのですが、この度、例えばですけれども、委員おっしゃられた市内公共施設・商業施設等に、このにんしんSOSカードが配架されているという、そういったものが進んできた。また、令和3年12月から市立中学校・高校におきまして、より安心して学校生活を送れるように女子トイレに生理用品を設置するという環境整備を進めてまいりました。以上のような背景もありまして、女性の不安・悩みを軽減していく、またSDGsのジェンダー平等への理解が少しずつ、理解が進んできたこと、進んでいくことも踏まえまして、こども家庭支援センターとの協議の中で、今後、各中学校・高等学校に配架していこうということで、配架するということにいたしました。
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名刺大の小さなカードです。それ一枚置いたからと言って、救える生徒は少ないかもしれません。配架当初は、思春期真っただ中の生徒が、いたずらで電話やメールをするかもしれません。
でも、それでも、必要な事業であるはずです。
市内では、15歳未満の出産も数年前にありました(統計上記録されています)。中学生の出産があって、中絶が全くないとは考えにくいですし、さらにその周囲には「妊娠したかもしれない」との不安を抱えた人がさらに多くいたかもしれません。
そういった不安や困りごとに対して、今日の答弁は有効な一歩を着実に踏み出すものであったたと、思います。
ーーーー以下、質疑部分すべて書き起こしーーーー
▽加藤
こども家庭支援センターの事業として、本市では思いがけない妊娠相談周知用カード、通称にんしんSOSカードの配布を行っています。これは市の公共施設や商業施設などに置かれていて、学校へは各中学校に10枚ずつ配布しているとこれまで伺っていたのですが、現在も同じ状況ですか?
●保健体育課長
いま委員にご指摘いただいた各学校10枚ずつというところでいいますと、こども家庭支援センターと内情について協議する中で、平成30年度に、各校の校長先生に、各校あてに配布したと聞いております。
▽加藤
すいません、少し聞き取れなかったのですが、平成30年度に管理職に配布をしたのか、平成30年度以降毎年管理職に配布をしているのか、どちらですか?
●課長
平成30年度に、です。
▽加藤
じゃあ、それ以降は、1枚も各中学校に配布していなかったということですか?
●課長
その通りです。
▽加藤
以前、こども家庭支援センターとの質疑の中で、にんしんSOSカードを中学校のトイレなどに配架することについての協議状況を伺った質疑の際には、「こども家庭支援課と共同で児童相談課も行っていますが、以前、教育委員会とこちらのお話をした際には、やはり学校現場としては、こういったものを置くことは、かえって児童・生徒に性交渉等といったものを勧めるというか、不適切であるということで、教育現場などはそういう話をしています」[1]との状況だったのですが、その後教育委員会としての認識に変化はあったのでしょうか?
●課長
それまでの経緯というところでは、以前にそのように教育委員会が答えたという認識はあるのですが、この度、例えばですけれども、委員おっしゃられた市内公共施設・商業施設等に、このにんしんSOSカードが配架されているという、そういったものが進んできた。また、令和3年12月から市立中学校・高校におきまして、より安心して学校生活を送れるように女子トイレに生理用品を設置するという環境整備を進めてまいりました。以上のような背景もありまして、女性の不安・悩みを軽減していく、またSDGsのジェンダー平等への理解が少しずつ、理解が進んできたこと、進んでいくことも踏まえまして、こども家庭支援センターとの協議の中で、今後、各中学校・高等学校に配架していこうということで、配架するということにいたしました。
▽加藤
いま、配架するということで、にんしんSOSカードの配布、配架については、これまで何年も、複数の議員が求めてきたものなので、かなり大きな一歩だと思います。配架するに至った経過については、市内の公共施設に配架が進んで、学校の女子トイレに生理用品が置かれて、SDGsが推進されて、というところでご説明はいただいたのですけれども、根本的に、なんというか、にんしんSOSカードを置くことが不適切だと聞こえるような答弁については、変わってないのか、それとも何かこの部分についても認識に変化があったのかというのは、いかがですか?
●学校教育部長
いま保健体育課長からもありましたが、ここ数年で、性情報の氾濫、それから子供たちを取り巻く社会環境が急速かつ大きく変化している状況を認識しているところです。そのような背景として、まずは、学校ではこれまでもそうですが、子どもたちを加害者・被害者にさせないということで、教育活動全体を通じて生命(いのち)の安全教育であるとか、性教育の充実を図ってまいりましたが、本カードの配架等も含めて、相談しやすい関係づくりであるとか、体制づくり、環境づくりが必要だろうと私たちの方でも判断しましたので、このような形になりました。
▽加藤
今回配架をするのは、どこに配架して、何枚くらい配架をして、配架したことの生徒らへの周知はどのようにするのでしょうか?
●課長
今後、配架場所、配架枚数含め、こどもたち・保護者を含めて、配架方法の調整をこども家庭支援センターと調整し、各中学校・高校・特別支援学校に送付する予定です。
▽加藤
枚数等を含め、今後どのような形になるのかというのは調整いただくということで、その結果報告を待ちたいと思いますけれども、その時の話し合いの時にぜひ持ってほしい認識としては、にんしんSOSカードを、生徒が直接見て取れる場に配架する・周知することが大事だなと思ってまして。というのも、衛生年報を見ていると、つい数年前も15歳未満の出産が本市でありました。その際学校の先生がどう対応されたのか私は知りえませんが、少なくとも、出産に至る以前にはなんらか相談したくなる状況はあったと思います。
また、中絶は統計上20歳未満でしか公表していないので実態はわかりませんが、15歳未満の出産があって、中絶が全く無いとは考えにくいですから、妊娠を巡る相談ニーズというのは、件数としては少ないけれど、状況としては非常に深刻だと思うので、直接見られる場に置いた方が間口が広がるのではないかなと思うのです。ぜひ調整の際は、直接見てとれる場、これまで女子トイレの個室に置いたらいいのではないかとかそういう形で表現していましたが、それに限らず、直接見て取れる場でぜひ調整いただけないかなと思うのですが、いかがですか?
●課長
委員ご指摘の部分でございますけれども、我々大人に対して、市庁舎の中でも、女子トイレの中に、共有スペースににんしんSOSカードが配架されているというのは認識していて、ただそれが中学生がというところになったときに、置いているからというのは環境として担保しながらも、やはり一番大切なのは、そういう、心も体も一番発達していく時期でございますので、大変デリケートな部分もございますので、その配架場所であったり、どのように周知していくかについては、今後学校の意見等もききながら、対応してまいりたいと思います。
[1] 横須賀市 令和 5年 3月定例議会 民生常任委員会・予算決算常任委員会民生分科会 03月10日-04号