【視察報告】群馬県前橋市:超スマート自治体の取り組みについて(官民ビッグデータを活用したEBPM推進) 2019年10月

【視察報告】群馬県前橋市:超スマート自治体の取り組みについて(官民ビッグデータを活用したEBPM推進) 2019年10月

【群馬県前橋市:超スマート自治体の取り組みについて】… 2

■1 視察目的… 2

■2 「官民ビッグデータを活用したEBPM推進」 所管部局によるご説明… 2

■3 視察所感と、横須賀市に活用する上でのポイント… 4

【群馬県前橋市:超スマート自治体の取り組みについて】

■1 視察目的

横須賀市におけるEBPM(Evidence-Based Policy Makingの略。証拠に基づく政策決定)の一層の推進をはかるため、官民ビッグデータの活用を掲げる前橋市の本取組みを先進事例として視察した。

EBPMの推進については、私の議員1期目の質疑において一般質問で取り上げて[1]おり、また、所属会派「よこすか未来会議」のマニフェストでも掲げている。要するに、政策立案・効果検証を、感覚や経験ではなく、具体的な事実やデータに基づいて行おうということである。

今回視察した前橋市は「水と緑と詩のまち」をキャッチフレーズし、赤城山と利根川に代表される自然環境、萩原朔太郎の文学における功績を有する風光明媚な地であるものの、人口減少トレンドは本市と変わりない。財政難の中で、行政課題の多様化・複雑化に向き合うには、EBPMによる真に効果的な政策決定が欠かせない。そこで、東京大学・三菱総合研究所・帝国データバンク、という日本のデータサイエンスにおける最先端の組織を巻き込んだ本取組みを、横須賀市でのEBPM推進のヒントとすべく視察した。

 

■2 「官民ビッグデータを活用したEBPM推進」 所管部局によるご説明

説明者:3名

・政策部情報政策課情報政策課係 副主幹

・政策部未来の芽創造課 副主幹

・政策部未来の芽創造課 職員

 

●事業推進の背景

背景には人口の量(人口数)・質(人口構成)がある。現在前橋市の人口は約33万人だが、2060年には22万人程度への減少をみこむ。老年人口比率も2010年には約24%であったものが、2060年には約40%となる。地域課題が複雑化し、中心市街地活性化・公共施設再編・空き家対策など、複数ある課題に対し、単一の答えでは対応が難しくなっている。さらに、税収減による財政難も重なり、行政があらゆる公共サービスを提供するのは限界である。

これらをふまえ、市は総合計画の中で「地域経営」という考え方を掲げ、「めぶく。~良いものが育つまち~」をビジョンとしている。それぞれの主体的な活動を促し、つなげ、支援するために、様々なステークホルダーとの①目線合わせ=議論の前提となる現状の共有 と、②納得感醸成=事業効果とマイナス面の具体的な認識 が重要であり、エビデンスが不可欠である。

 

●きっかけ

地元選出の衆院議員が、三菱総合研究所・帝国データバンク・東京大学空間情報科学技術研究センターの共同研究の実証の場として前橋市へとつなぎ、2017年11月に「超スマート自治体研究協議会」が発足した。大学との連携となる場合、えてして技術志向になりがちであるが、本件では「課題志向」、あくまで地域の課題解決のための取組みを意識している。

 

●全体最適をデータでみられるように

スモールデータとは、ある目的のもと集められた、活用範囲が限定的な“結果”のデータであるととらえるならば、ビッグデータとは、特定目的がなく、集められた活用範囲が不特定な“考える”ためのデータであるといえる

 

●モデルケース1:赤城山の人の流れの分析

従来は、山頂でカウントし、登山者の人数を数えていたものの、どういった人が来たのかは全く分からなかった。さらに、赤城山は富士山に次いで裾野が広い山であり、山頂エリア以外の訪問者はわからなかった。しかし、データを活用し調べたところ、山頂:南麓=1:3の訪問者数比率であることがわかり、南麓には1,590,810人/年に対し、山頂エリアは523,675人/年であることがわかった。この数字が見えたことで、打ち手として、エリア全体を回遊させる取り組みが考えられるようになった。

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●モデルケース2:中心市街地の人の流れの分析

赤城山は自動車保有率が全国1位であり、公共交通の利用が低迷している。そもそも、1,2時間に1本しか来ないバスなど、公共交通の整備に課題が多く、課題の詳細を可視化するために、「前橋版MaaS構想」として鉄道・バス・自動車・徒歩などを色分けし、点の動きとして、人の動きの可視化をはかった。

 

●モデルケース3:電話帳データを活用した空き家の推定

電話回線を停止している家を空き家の可能性が高いとして推定した。この推定をもとに、住民基本台帳データ、固定資産税台帳データ、水道データなど、自治体の保有するデータを活用すれば、より高精度に推定が可能となる。

全市空き家調査をゼンリンに委託し行ったが、毎年度同じ予算をかけて調査ができないという難点がある。こうしたシステムが、代替するものになりうるのであれば、空き家問題を所管する部局としても利用したいとの意識がうかがえた。

 

■3 視察所感と、横須賀市に活用する上でのポイント

●1 何のためのデータなのか、考えて取り組むこと

言わずもがなではあるが、データは、存在するだけでは価値が生まれない。どのような行政課題を把握・解決するためにデータを収集するのか(データの収集)、また、データからどのような行政課題と解決法が見いだせるのか(データの活用)が前提になければ、EBPMの推進ははかれない。「スモールデータとは、ある目的のもと集められた、活用範囲が限定的な“結果”のデータであるととらえるならば、ビッグデータとは、特定目的がなく、集められた活用範囲が不特定な“考える”ためのデータであるといえる」と担当職員のご説明にあった通り、ビッグデータの活用と、スモールデータの活用にはそもそもの性質の違いがある。ビッグデータを巡る議論においては、「何に使うかは現時点ではわからないけれど、誰かが何かを見出して活用してくれるはずだから、自由に使えるようにとにかく公開しよう」[2]という、オープンガバメントの視点を本市に根付かせることが大切であり、スモールデータについては、政策立案過程にデータサイエンティストの視点を入れ、課題解決のために真に有用なデータの収集・活用がなされることが大切なのではないか。なぜわざわざこれを強調するのかといえば、横須賀市における市民へのアンケート調査などを見ると、聞いておくべき項目が盛り込まれていない事例や、聞きかたに些か問題があるのではないか、と思われる項目が見られることがあり、また、「非公開としなければならない理由がなければ、全てオンラインで掲載しておく」ような、前のめりなオープンデータ化までは至っていないと感じるからである。

 

●2 GIS以外の視点も積極的に取り入れること

GIS(Geographic Information System:地理情報システム)は、その名の通り、地理情報を扱うシステムである。視察でご紹介いただいた「超スマート自治体研究協議会」のモデルケース3つはいずれも大規模な地理情報を扱う高度かつ有用なものであることは疑いの余地がない。同協議会は、国土交通省の「スマートシティモデル事業」における「先行モデルプロジェクト15事業」の一つ[3]に選出されるなど、全国から注目を集めている。実は、「スマートシティモデル事業」における「重点事業化促進プロジェクト23事業」には横須賀MaaSシティ実現コンソーシアムが選ばれており、横須賀市もスマートシティの分野においては、全国を先導する立ち位置にいる。また、両市ともに、経済産業省・国土交通省の「スマートモビリティチャレンジ」の支援対象事業[4]に選ばれており、地理情報を活用したスマートモビリティの社会実装における先駆的な取り組みが、国からも期待されている。

その上で、本視察を通じて感じたことは、超スマート自治体研究協議会のモデルケース3つはいずれも、GISを活用した色合いが強い事例であることだ。それ自体の良し悪しという話をここで展開したいわけではない。むしろ、こうしたGISをさらに積極的に活用しつつ、「地域生活の継続支援」という目的のもとでは、地理情報以外のデータ活用との連携が一層重要になるだろう、ということだ。自治体が保有するデータの活用は、個人情報利用の観点から様々な議論は必要であるものの、例えば「被保険者の健康の保持増進」と「医療費適正化」を目的として本市で策定されている「横須賀市国民健康保険第2期データヘルス計画」[5]のように、レセプトというある種の“スモールデータ”を行政計画の根拠とする取り組みは、分野によっては既に進められている。視察時の質疑の際も、「行政も縦割りとなっている。空き家問題を所管する部局は空き家の減少が、リノベーションを所管する部局は空き家の活用がそれぞれ主目的となる。民間データ、たとえば地価データ・経済活動に関するデータを組み合わせることで、空き家を活用に回すべきエリア・人の流れが生み出しやすいエリア、などが見出しやすいだろうと思っている。課題は各部局で山積しているが、この取り組みでやろうとしていることは、各部局の課題を解決できる仕組みをつくろうということ」という意見がきかれた。情報政策を、単に、情報政策を所管する部署だけにとどめることなく、全庁横断的に、課題解決に生かす上では、欠かせない視点ではないか。

 

 

 

[1] 平成30年6月定例議会 一般質問(6月6日)。横須賀市で「EBPM」の語を用いて議場で質疑が交わされたのはこの時が初めてであった。

[2] 例えば、福井県鯖江市の「データシティ鯖江」が参考になる。https://www.city.sabae.fukui.jp/about_city/opendata/datacity-opendata.html

[3] https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi07_hh_000139.html

[4] https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190618004/20190618004.html

[5] https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/3070/de-taherusukeikaku.html