2022年08月31日

【学齢期の障害福祉】(2022年8月29日 一般質問その②)

2022年9月定例議会 一般質問の報告その2です。





1 障害特性に合わせた支援が必要な市民等への各年齢段階における諸課題への対応について





(2) 学齢期の障害福祉について





ア 教員不足が原因となる中での本市の特別支援教育の現状について





イ 巡回相談のさらなる活用につながるニーズの調査、把握について





ウ 各学校の特別支援教育を支援するため、特別支援学校が有する特別支援学級に対するセンター的機能を強化することについて





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■少子化でも、増え続ける特別支援教育の必要性





 「特別支援教育」とは、障害のある幼児・児童・生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児・児童・生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです(文部科学省)。





 各小中学校には、特別支援教育を行う、「特別支援学級」を置くことができるのですが、学級数は増加傾向が続いています。例えば、小学校の特別支援学級数2013年度 107学級であったものが、2022年度には186学級となっています。急激に進行する少子化の一方で、むしろ特別支援教育は必要性を増しています。





■すぐに先生は増やせないから、先生が先生に相談できるようにしよう(巡回相談という手段)





 今年3月定例議会の代表質問で私が質問した際に、新倉教育長が「根本的には教員の先生方が確保できていないという問題に帰結するのです」とおっしゃっていた通り、特別支援学級の担任を担う人材も、不足しています。





 これに対し、国が15年前に定めた特別支援学級介助員・教育支援臨時介助員という制度があり、現在も市内各校で特別支援学級を支えて下さってはいるものの、サポート役であり、学級担任が責任もって児童生徒の育ちを支えることに変わりはないため、抜本的な解決にはなっていません。





 そして、教員不足の中、特別支援学級の担任を担う先生も、特別支援教育に詳しいかたばかりというわけにもいかず、正直なところ、それは不安だな…と感じるお話も保護者から伺っていました。そして、特別支援教育に詳しく熱心な先生であったとしても、とにかく先生の人数が足らないわけですから、何とかして頑張ってくださっている状況で、大変な思いをしています。





・・・





 こうした状況に対し、今回は「巡回相談」という仕組みについて質問しました。巡回相談とは、高度な専門性を身につけた特別支援学校の担当者が小中学校を巡回し、環境の整備や学習・生活上の配慮、教材・教具の作成と活用等について助言する仕組みです。これを、各校に認知・活用していただき、先生が足らない中でも、的確に特別支援教育が児童生徒に届けられるよう、そして先生方もどうしてよいやら困らないようにしようとする観点で、質問しました。









■新倉教育長からは「特別支援学校から人材の巡回相談を受けられるのだ、教育相談を受けられるんだと確実に周知いたしたい」と答弁がありました





 現在、巡回相談は、学校側の要請をもとに、実施されます。これを、学校側から依頼する(プル型支援)よりも、むしろ年度当初に来てくれる仕組みにしていく(プッシュ型支援)にしたほうがいいのでは?と問うたところ、以下の答弁がありました:





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★教育長
 ご指摘と、ご心配をありがとうございます。一点私から報告しておかねばならないのは、いま、特別支援学校から、特別支援学級に巡回で行かれるかたは、特別支援学校に別の仕事でいるわけではなく、そこにいる教員がそのまま、特別支援教育に詳しいからということで、学級に行っていただいているというところで、フリーにあるわけではないことはまず一つ。
 そのような状況の中で、聾学校、養護学校の正規教員の定数は74人あるのですが、そのうち臨時的任用教員が20人という状況になっているのです。臨時任用の方でも経験はあるのですが、この74人全体が、自分の学校の子供たちの面倒を見ている状況があります。で、例えば自分の学校の授業が終わったときに、各学校を回りながら、それぞれの生徒あるいは学校の問題点をお教えいただくという形の巡回指導となっているので、初めから自分の学校の授業を行わないで各学校を回る日を決めるのがなかなか難しいのが実態。なので、各学校のほうで、こういう内容、例えば養護教諭のなかでも知的障害の話題なのか、身体障害の問題なのか、と様々話題があれば、それに詳しい方をさがして来ていただかなければなかなか難しいので、学校の希望、なによりもこどもたちの状況をわかって、それに詳しい方をお願いする形のほうが、適切なアドバイスを受けられるので、校長の依頼という形でやるべきだと考えたところです。





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 また、現状では、特別支援学級の担任に新たに着任された先生への研修の機会が、5月を回ってからとなってしまう事例も多いのですが、これでは着任早々1か月間困りっぱなしになりかねません。そのため、できる限り、4月の早い段階で、この特別支援学級の担任に決まったかたが、こうした相談の仕組みがあることを知れるようにしていただけないでしょうか。と問うたところ、





4月早々に、特別支援学級の担任になった場合、それらのお子さんにどのような支援が必要か迷うのであれば、校長等を通じて特別支援学校から人材の巡回相談を受けられるのだ、教育相談を受けられるんだと確実に周知いたしたいと思います





と答弁が得られました。









■教員不足は国の責任。一方で、特別支援教育が必要な児童生徒を切れ目なく引き継ぐことは、自治体の責任でもある。





 今回の質疑は、ある意味では、「次善の策」でもあります。なぜかといえば、「教員不足」というものすごく大きな課題が、学校教育全体の根底にあって、それが解消されない限り、学校教育をめぐる様々な問題の根本的解決が望めないからです。そして、教員不足を招いているのは、義務教育の現場に対して、長らく抜本的な改善を行うことができなかった、国の責任です。





 一方で、特別支援教育が必要な児童生徒は、現に目の前にいらっしゃいます。そして、日々一番密に接している行政は、まぎれもなく、自治体です。





 乳幼児期に、療育相談センターで診察を受けた幼児が、やがて小学校に通い、先生と触れ合い、放課後等デイサービスなども利用しながら、中学校に通うようになり、その先のキャリアについて考えていく~という一連の成長の流れの中で、それぞれの支援先が、情報を密に連携し、切れ目なく、その子にとって最適な特別支援教育を受けられるようにすることは、横須賀市に求めていきたいと思いますし、「教員不足」という巨大な問題が一挙に解決される一撃が無い中であっても、市・市教委として取り組めることは、今回の「巡回相談」のさらなる活用のように、存在すると思います。









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(以下、質問全文)





●(2) 学齢期の障害福祉について





 続いて、学齢期の障害福祉について伺います。本年度から、新たな教育振興基本計画、および支援教育推進プランに基づき、特別支援教育が推進されています。小学校の特別支援学級数は増加傾向が続き、2013年度107学級であったものが、2022年度には186学級となっています。急激に進行する少子化の一方で、むしろ特別支援教育は必要性を増しています。教育委員会としても、特別支援教育の充実、ひいてはインクルーシブ教育システム構築に向けご尽力いただいていると思います。





●ア 教員不足が原因となる中での本市の特別支援教育の現状について





 特別支援教育を巡っては、3月定例議会の代表質問にて、特別支援教育に携わる教員の在り方と配置の側面から問いました。その際、新倉教育長が「根本的には教員の先生方が確保できていないという問題に帰結するのです」[1]とおっしゃられていた通り、私としても、教員不足という課題について、特に特別支援学級をめぐる側面から伺いたいと思います。





 国が2007年度より「特別支援教育支援員」の地方財政措置を開始して以来、15年が経過しました。先に述べた通り、この間、特別支援学級は増加し続けています。本市では、特別支援学級介助員・教育支援臨時介助員を配置することで、教員不足と言われる中での特別支援教育の支援を行ってきました。しかし、介助員の役割は、学校での日常生活上の介助や、学習支援、安全確保などの学習活動上のサポートであり、あくまでも学級担任が特別支援教育の責を負っています。そこで改めて伺います。特別支援学級介助員・教育支援臨時介助員を配置しての対応は行っているものの、根本的には教員不足が原因となる中での本市の特別支援教育の現状について、教育長のご見解を伺います。





●イ 巡回相談のさらなる活用につながるニーズの調査、把握について





 特別支援学級担任の指導能力にばらつきがある点については、指導能力を向上させるべく、教育委員会がご尽力くださっていることは、感謝いたしております。一方で、学級担任の指導能力向上を待っていては、今この瞬間特別支援教育を受けている児童は、その効果をなかなか得られません。授業補助という点では特別支援教育支援員の存在はありがたいものの、問題を本質的に解決できるわけではありません。





そこで即座に力になるのが、巡回相談なのではないでしょうか。特別支援学級の児童の保護者は、高度な専門性を身につけた特別支援学校の担当者が小中学校を巡回し、環境の整備や学習・生活上の配慮、教材・教具の作成と活用等について助言するこの制度によって、学級担任の指導能力向上を待たずして、お子さんの教育環境向上という効果を得られることが期待できます。





 ところが、この巡回相談は、保護者にその存在があまり認識されていません。学級担任が学校長に相談し、課題が認識され、「これは巡回相談で協力を仰ごう」と学校長が要請をすれば保護者も巡回相談の効果を得られますが、大抵の場合、保護者は巡回相談という仕組みは知らず、学級担任と保護者の間の会話で終わってしまうので、学級担任の現状の指導能力次第では、保護者は困り感を伝えても、それが解決しない現状があります。せっかく専門性を有する教員が巡回相談にきて、アドバイスいただける機会があるのならば、保護者としてはぜひお願いしたいとなるはずのところ、なかなか現状ではそこまで行きつくのが難しいのです。「要請する声が届いたら、訪問します」という仕組みでは、うまくいかないのです[2]





 そこで教育長に伺います。巡回相談をさらに活用し、特別支援教育のニーズある児童生徒と保護者がより的確な支援を受けられるよう、今一度、全校の特別支援学級に対し、巡回相談のニーズを調査、把握いただけないでしょうか。





●ウ 各学校の特別支援教育を支援するため、特別支援学校が有する特別支援学級に対するセンター的機能を強化することについて  そして、各学校の特別支援教育を丁寧に支援するために、巡回相談以外の特別支援学校が有する特別支援学級に対するセンター的機能全般についても、量的・質的両側面から高めていただきたいと思います。今年の代表質問で、支援教育のセンター的機能について問うた際に、「特別支援教育など、支援教育全般については、様々な関係施設との連携が必要なことから、引き続き支援教育課が担ってまいります」とご答弁いただきました。特別支援教育に携わる各学校の教員を支えるため、今一度、関係機関との連携を深め、特別支援学校が有する特別支援学級に対するセンター的機能を強化いただけないでしょうか。教育長に伺います










(1問目に対する答弁)





(2) 学齢期の障害福祉について





ア 教員不足が原因となる中での本市の特別支援教育の現状について





★教育長





本市の小中学校の特別支援学級の在籍者数と学級数は、10年前(平成25年度)は557人・163学級でしたが、令和4年度においては1134人・254学級となっています。これに伴い、特別支援学級の担任の数も、平成25年度194人→令和4年度296人にまで増えています。





教員配置は、通常学級と同様に、実際に欠員が生じており、臨時的任用職員を充てている状況です。また、特別支援教育について、経験豊富な教員をすべての学校に配置することは難しい状況にあります。





イ 巡回相談のさらなる活用につながるニーズの調査、把握について





★教育長





小中学校の特別支援学級における課題について、校内で解決が難しい場合、特別支援学校と連携した指導を積み重ねることが、教員の専門性をより高めるためにも必要なこととなっています。本市には市立養護学校と聾学校があり、2校が特別支援学級に対し専門性を生かした教育相談を行っています。ここでの“巡回相談”は、このことだと考えています。また、県立養護学校等にも、教育相談の機能がありますので、それぞれの小中学校における特別支援学級の学級経営、指導内容、ならびに児童生徒の障害に応じた個別の指導内容策定への助言をいただいているところです。





これらのニーズは、個々の小中学校によって異なるので、一律にニーズの調査・把握を行うのではなく、教育委員会としては、各小中学校の校長が適宜、特別支援学校に要請できるよう、引き続き巡回相談の周知を進め、活用を推進してまいります。





ウ 各学校の特別支援教育を支援するため、特別支援学校が有する特別支援学級に対するセンター的機能を強化することについて





★教育長





私が本年の代表質問でお答えした、「支援教育のセンター的機能」とは、特別支援教育に関する施策の立案から、財源措置、財務機能など、一連の機能と捉えていますので、支援教育課がその任を行うものと考えお答えしたものです。前問での通り、各学校における特別支援学級は、児童生徒の支援策について個別の助言を特別支援学校に適切に求め、特別支援学校は、効果的な支援策を示し、継続的に教員の専門性の向上に寄与するという関係性にあると思っています。 本市においては、独自に特別支援学校である市立養護学校、聾学校を設置していることから、これら特別支援学校の役割として、各小中学校の特別支援学級とつながり、特別な指導を行うことを、センター的機能と議員はおっしゃっているのだと思います。おっしゃる通り、個別の指導において、専門性の高い聾学校・養護学校の知見を、各学校の指導に活かしていくための機能強化は当然図っていかなければならないものと考えています。





―――――





(一問一答部分)





●(2) 学齢期の障害福祉について





●イ 巡回相談のさらなる活用につながるニーズの調査、把握について





▽やはり、本市の特別支援学級の在籍児童生徒数がかなり増えていることを教育長のご答弁でも伺って、実際に教職員配置でもかなり困難な状況があるとお話しいただきました。ニーズの調査、把握についての部分で、一律にニーズの把握を一括で行うのではなくて、各学校長が要請できるよう引き続き周知いただくとご答弁いただきました。





支援級の先生の能力向上、能力向上と我々も求めてますが、頑張ってくださっている先生、とても能力の高い先生はいらっしゃることは承知しておりまして、やはり、悩むこと、支援級の児童生徒との信頼関係がうまく築けず困ることは誰でもあると思います。こうした際に、巡回相談を学校側から依頼する(プル型支援)よりも、むしろ年度当初に来てくれる仕組みにしていく(プッシュ型支援)にしたほうがいいようにも思えるのですが、いかがでしょうか





★教育長





ご指摘と、ご心配をありがとうございます。一点私から報告しておかねばならないのは、いま、特別支援学校から、特別支援学級に巡回で行かれるかたは、特別支援学校に別の仕事でいるわけではなく、そこにいる教員がそのまま、特別支援教育に詳しいからということで、学級に行っていただいているというところで、フリーにあるわけではないことはまず一つ。





そのような状況の中で、聾学校、養護学校の正規教員の定数は74人あるのですが、そのうち臨時的任用教員が20人という状況になっているのです。臨時任用の方でも経験はあるのですが、この74人全体が、自分の学校の子供たちの面倒を見ている状況があります。で、例えば自分の学校の授業が終わったときに、各学校を回りながら、それぞれの生徒あるいは学校の問題点をお教えいただくという形の巡回指導となっているので、初めから自分の学校の授業を行わないで各学校を回る日を決めるのがなかなか難しいのが実態。なので、各学校のほうで、こういう内容、例えば養護教諭のなかでも知的障害の話題なのか、身体障害の問題なのか、と様々話題があれば、それに詳しい方をさがして来ていただかなければなかなか難しいので、学校の希望、なによりもこどもたちの状況をわかって、それに詳しい方をお願いする形のほうが、適切なアドバイスを受けられるので、校長の依頼という形でやるべきだと考えたところです。





●ウ 各学校の特別支援教育を支援するために、特別支援学校が有する特別支援学級に対するセンター的機能を強化することについて





▽人的資源が限られる中で、それでも特別支援学校から特別支援学級に赴いてくださることは感謝していますし、実際すべての先生が不足する中で、とうぜん特別支援学校でも不足しているのだというところは、私も少しですが承知しています。一方、特別支援学級に在籍している児童生徒にとっては、その一瞬一瞬が大切な教育機会ですので、是非この巡回相談の仕組、よこすか未来会議として質疑をしている中で、巡回相談の仕組みについても、教員の研修の際に、支援級もたれた担任の先生方にしっかりお伝えいただいているとも伺っています。ぜひ、そういった側面からも、できる限り、4月の早い段階で、この特別支援学級の担任に決まったかたが、こうした相談の仕組みがあることを知れるようにしていただけないでしょうか。





★教育長 先ほど、令和4年度特別支援学級担任数が296名という人数なのですが、このうちの65人がやはり臨時任用教員になってしまっています。また、年度ごとで、学校が変わった、あるいは通常級の担任に戻るという人事異動が行われているので、4月早々に、特別支援学級の担任になった場合、それらのお子さんにどのような支援が必要か迷うのであれば、校長等を通じて特別支援学校から人材の巡回相談を受けられるのだ、教育相談を受けられるんだと確実に周知いたしたいと思います






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