2019年11月01日

【視察報告】新潟県三条市:マイナンバーカードによる独自サービスについて 2019年10月

【視察報告】新潟県三条市:マイナンバーカードによる独自サービスについて 2019年10月

内容

【新潟県三条市:マイナンバーカードによる独自サービスについて】... 5

■1 視察目的...

■2 マイナンバーカードによる独自サービスについて 所管部局によるご説明...


■3 視察所感と、横須賀市に生かす上でのポイント...






【新潟県三条市:マイナンバーカードによる独自サービスについて】


■1 視察目的


三条市におけるマイナンバーカードを活用した独自サービスをどのような背景のもと整備したのか伺い、マイナンバーカードを活用し横須賀市で何らかの業務改善ができないかを考え、ひいては横須賀市の情報政策全体の方向性を考える一助とするため足を運んだ。

マイナンバーカードを使って何かが画期的に便利になるのかと問われれば、YESとも、NOとも言い難いのが日本の現状ではないだろうか。

私は電子行政の推進に大いに賛同しているが、マイナンバーカードが普及するとは思えない。普及させなくてよい、と言っているわけではなく、現状では普及するとは全く思えないという意味だ。

そもそも、電子行政を推進するために国民に番号を振ったにもかかわらず、なぜ「カード」という実物が必要なのか意味が分からない。クレジットカード、運転免許証、健康保険証、ポイントカード、病院の診察券…日本人の財布にはカードがあふれかえっている。そこにさらに一枚カードを足すという。生活実態を捉えていないとしか言いようがない。何より、高度な個人情報であるナンバーが、カードに記されている点で、セキュア(安全)ではない。

ともあれ、電子行政の推進と、それによる住民生活の向上に少しでも資するよう、始まってしまったマイナンバーカードの活用には取り組まねばならない。総務省が2019年6月に配布した資料「マイナンバーカードの普及促進等のポイント」[6]では、2022年度に国民ほぼ全員がマイナンバーカードを持っている想定になっている。曰く、「令和4年度中にほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを想定し、国は具体的な行程表を(2019年)8月をめどに公表。市町村ごとのマイナンバーカード交付円滑化計画の策定の推進と、定期的なフォローアップを行うとともに必要な支援を実施」と記されている。

マイナンバーカード活用に取り組むからには、普及させねばならないし、普及させるからには、市民が活用するインセンティブがあったほうがいい。今回視察した三条市は、金属加工が地場産業として根付き、隣接する燕市と合わせ「燕三条」として全国的な知名度を誇っているが、基幹系システム標準化、デジタル化、オンライン化…などに関する国の施策検討の場に頻繁に招かれる「情報政策の名物課長」(総務部情報管理課長)が在籍していることでも、自治体関係者の中ではよく知られている。今回の視察では、課長から直接お話を伺った。


■2 マイナンバーカードによる独自サービスについて 所管部局によるご説明


・説明者 1名:総務部情報管理課長


●マイナンバーカードに先立つ取り組み1 住民情報系システムの共同化


県内全自治体に声掛けしたが、①ベンダーの囲い込み②改革への後ろ向きさがある自治体の存在 があり、最終的には新潟県内5自治体(長岡市、三条市、見附市、魚沼市、離島である粟島浦村)が共同化に加わることとなった。市町村合併が、随意契約での割高なシステム導入を生んでいた過去があったこともあり、共同化により10年間で約50%のコスト削減(93億円→47億円)となった。


●マイナンバーカードに先立つ取り組み2 住基カード


住基カードの時代に、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の前身団体からの補助事業として、今のコンビニ交付機能につながるような自動交付機導入事業があった。当初の国からの説明とは異なり住基カードが必須交付とされず、任意交付となったせいで目測が外れ、自動交付機の利用が低迷した。事態改善への対策として、カード交付手数料の無償化や独自サービスの実施へと踏み込んだ。結果、住基カードの交付率は全国平均の3倍(約5%→約14%)となった。


●マイナンバーカードによる独自サービス


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図の通り、

①証明書のコンビニ交付

②窓口支援

③図書貸出受付

④避難所の入退所受付

⑤選挙の投票入場受付

⑥職員の出退勤管理

を2016年1月から、さらに

・期日前投票の宣誓書記載の省略

・学校などの出退勤管理

・民間優遇サービスの提供

を2018年から実現した。課長によれば、マイナンバーカードの登場により一気に進んだ、というよりは、2003年「街なか行政サービス拡大特区」に三条市が申請し、自動交付機の運用・利用頻度向上に励んだ[7]という背景など、情報化政策に前向きな姿勢が、現在の証明書のコンビニ交付等に寄与しているそうだ。

【独自サービスに関する簡単な説明】

①証明書のコンビニ交付

住基カードの時代から、三条市が旗振り役となって進めてきたことでもある。



②窓口支援:(1)証明書発行支援

市役所窓口でマイナンバーカードを提示することで、住民票の写し、税証明、戸籍証明書の申請書への記入をすべて省略できる。かつ、コンビニ交付と同じく交付手数料を割引する。コンビニ交付が高齢者にとって困難である可能性を考慮し、窓口での証明書発行の支援という運用をカードで行っている。

有人窓口対応である安心感が高齢者にはあると想像できるし、「お年寄りが「どうやってこれ書き込めばいいですか」と聞いてくる時間を考えれば、カード受け取って、紙で出した方が早い」とは課長の説明にもあり、まったくその通りである。



②窓口支援:(2)総合窓口の支援

申請書記載は約300種類もあるため、簡素化。職員が記載文言を随時変更可能な機能を実装している。



④避難所の入退所受付

安否確認が来ても、避難者名簿には苗字程度しか記載されないケースが多く、該当者の特定が困難という経験を水害避難で経験し、このサービスに結びついた。サービス導入後、毎年の避難訓練で試行している。



⑤選挙の投票入場受付

期日前投票や選挙当日に、投票所受付でマイナンバーカードの提示により、顔写真で本人確認し、電子読取により該当者を検索でき、受付を瞬時に完了できる。また、期日前投票では宣誓書をシステムで出力するため、待ち時間無く投票が行える。すべての投票所に受付専用端末を配置し運用することで、住民の待ち時間の短縮と、従事職員の負担軽減を実現した。

選挙事務の応援職員確保は常に困難であり、住民を待たせることにもなる。2016年7月参院選期日前投票から導入した。課長曰く「学校体育館でも、LANケーブルを100mも用意しておけばすぐ導入ができる」とのこと。



⑥職員の出退勤管理

超過勤務は、2018年度において、前年比で半分程度になった。出退勤管理システムは学校教諭も利用しており、共有PCに3,000円程度のカードリーダーを差し込み運用、専用端末は導入せず、費用はカードリーダーの購入程度で済んでいるとのこと。「各教員がエクセルに入力し、それを管理職がとりまとめ、さらに教育委員会に、という仕組みが無駄であったので、導入した」との課長の説明にはただうなずくばかりである。簡単なシステムを作り、県への報告事項を満たす形としたが、職員の出退勤はin-outのみ。一方で、超過勤務は庶務システムで行い、出退勤の記録と照らし合わせて人事課が確認している。


■3 視察所感と、横須賀市に生かす上でのポイント


●導入費用もあまりかからず、市民サービス向上に資することは、早急に実施すべき


特に、②窓口支援:(1)証明書発行支援 については、高齢化率31%の本市において市民サービス向上に非常に有効なのではないか。

高齢の市民にとって、「ほかの人が待っているから、もたもたしては申し訳ないけれど、わからないから店員を頼らざるを得ない」コンビニは、あまり心地よいとは言えない。自動交付機は、「わかる」人にとっては便利でも、「わからない」人にとってはかえって不便になる。その点、有人の安心感と、カードを活用した効率化を両立させたこのサービスは、すぐにでも横須賀市に導入すべきではないか。


●情報システムを「まとめていく」必要性と有用性は高い


マイナンバーカードの活用ではないが、「名物課長」のお話に、「システムをまとめて調達しておらず、スケールメリットを出せていない市町村が多い」との指摘があり、大変有用だと感じた」。

情報システムは「見えない建物」を建てて維持管理しているようなものであり、横須賀市においても億単位の費用がかかっているが、その全体像は見えづらい。そして、これらシステムは、全庁一括で発注されているわけではない。図に示したような情報政策課が所管するシステムの開発・運用のほかにも、教育政策課が所管するよこすか教育ネットワークなど、情報政策課が諸課と連携を取ってはいるが、委託先や契約期間はそれぞれ、となっている。

三条市では、情報政策に関して、部局の要望を丁寧に聞いている印象を受けた。「業務の最適化をはかるのが、システム導入の目的である。それは『全庁的な業務の最適化』なので、調達をすべてまとめれば、かなり安くなる」と課長がおっしゃっていた通り、実際に新潟県内5自治体のシステム共同化では、10年間で約50%のコスト削減(93億円→47億円)につながっている。この辺りは、全庁的な業務見直しと一括発注のほかに、近隣市町との広域連携も有用かもしれない。

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以上

[6] https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/dai4/siryou1-1.pdf

[7] https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kouzou2/sankou/030829/16.pdf

住民基本台帳カードを利用して「住民票の写し」及び「印鑑登録証明書」を発行する自動交付機について、特例の導入により、商業施設ビルである「パルム1」に移設し、併せて、その運用時間を市役所窓口時間外でもサービス提供できるよう設定(10:00(日曜のみ 8:30)~19:30)するもの。

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