2018年06月27日

【深圳視察報告 その2】全3回

深圳視察報告、第2回です。ようやく視察本編です。




■第2回の内容


■3 視察報告
●主な視察項目の紹介
(1)電子決済システム
(2)華強北(秋葉原の数十倍ともいわれる規模の電器街)
(3)無人店舗(コンビニ・薬局・食堂・レンタサイクルなど)




(1)電子決済システム


微信支付(WeChat pay)と支付宝(Alipay)の2つのサービスで、中国ほぼすべての電子決済システムのシェアが占められている。買い物客は、各店舗にあるQRコードをスマートフォンで読み込み、オンライン決済を行う。これらは、中国の銀行口座と携帯番号が無ければ使えないため、旅行者は実質的に使用できない。露店での買い物も含め、町中の決済がほぼ全てQRコードで行われているので、いちいち現金を取り出している自分の姿はとても滑稽に映る。

この電子決済システムが優れているのは、店舗側に専用端末が不要である点だ。クレジットカード決済であれば、店舗は決済用の専用端末を導入せざるを得ないが、QRコードによる電子決済であれば、店舗側は自分の店のQRコードを紙で貼っておくだけでよい。買い物客側が端末(スマホ)を持っているからだ。また、電子決済であれば、店舗側は現金を保管する必要がないため、強盗等のリスクも大幅に低減される。

03_qr

ホテルのフロントにある、支払用のQRコード。

06_バッテリー

貸出式モバイルバッテリー。決済がQRコードで完了するため、筐体内に現金を保管するリスクが無い。

04_露店105_露店2

このような簡素な場所での食事の決済も、スマホで行う。


(2)華強北(秋葉原の数十倍ともいわれる規模の電器街)


華強北は、秋葉原の数十倍ともいわれる規模の電器街である。改革開放路線以後、深圳には工場が集積していったが、市内には中興通訊(ZTE)や、台湾の鴻海精密工業などの大手スマートフォンメーカーも立地し、関連する電子部品も集積し、一大サプライチェーンを築いている。

華強北の強みは、「なんでも揃う」「すぐ出来る」ことにある。例えば、スマートフォンの OSを組み込んだ全く新しい電子機器を作ろうとした際に、他の地域であれば、スマートフォン用の電子基板はまず売っておらず、部品の仕入れに数か月かかり、製造に際し新たな金型が必要となり、ある程度のロット数の製造が必須となり多大なコストがかかる…といった数々の障壁があるが、華強北には大抵のものが売っている。思いついたら、組み合わせて、少量生産して試験販売する、という試行錯誤のサイクルが圧倒的に早く回せる。この好環境を求めて集まるハードウェア製造系のスタートアップや研究者向けに、赛格创客中心(SegMaker)というスタートアップが入居するインキュベーションルームや、HAX(ハックス)という米国系アクセラレーター[1]のオフィスが立地し、次なるユニコーン企業[2]の発掘・育成に余念がない。



07_fqb入口

華強北の入口にある電子部品ビル入り口。この8階にHAXが入居している。

09_fqbもにゅめんと

華強北の入口のモニュメント。

08_fqb内部

10_fqbdrone

何に使うのか見当もつかない部品から、ドローンのような完成品まであらゆる電子機器が売られている。

(3)無人店舗(コンビニ・薬局・食堂・レンタサイクルなど)


電子決済導入の利点の一つに、決済を行う人員が不要になることがあげられる。無人コンビニでは、WeChat payで登録済みのスマートフォンで決済すると扉が開き、商品を取って扉を閉めると決済が終わる。各商品のラベルにRFタグ[3]がついており、部屋(もしくは棚)の中から何がなくなったのかが無線通信でわかるので、扉を閉めた瞬間に決済が終わる。熾烈な競争を経てofoとmobikeの2社寡占へと落ち着いたレンタサイクル事業では、利用者は自転車のQRコードを読み込んで開錠し、走行し、利用終了後は鍵をかければ決済が完了する。

16_hiveとofo

ofoのレンタサイクルと、宅配&発送ボックス「丰巢」。日本と異なり、発送にも利用できる。

11_無人コンビニ

無人コンビニ。電子決済のみ対応なので、旅行者は購入不可。

13_薬局

無人薬局。生理用品等の衛生用品だけではなく、医薬品もある。

14_未来商店1

15_未来商店2

無人食堂「未来商店」の外装と内装。選んだ商品が写真右下のカウンターから出てくる。写真左下の背を向けて座る人の前にあるテーブルは食後ボタンを押すと開き、ごみを回収、自動洗浄される。








[1] アクセラレーター = 設立間もないスタートアップ企業が、メンター(専門家)からマーケティング・企画・部材や資金調達などのノウハウの提供を受けながら成長する、いわば起業家の道場のような場所。

[2] ユニコーン企業 = 企業としての評価額が10億ドル(約1250億円)以上で、非上場のスタートアップ企業を指す。

[3] RFタグとは、ID情報を埋め込んだタグ。電波を用いた近距離の無線通信で情報をやりとりするもの。

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