2017年06月12日

【放課後の社会的包摂 あなたはどうしますか?】

【放課後の社会的包摂 あなたはどうしますか?】

ある地域に、小学校低学年のお子さんをもつ親がいます。

そのかたは、わけあって、働きながら、おひとりでその子を育てています。

その子は、放課後の時間を、学童クラブで過ごします。

その子は、発達に偏りを抱えています。うまくいかないことがあると、周囲の子に手を出したり、癇癪を起してしまう。学童クラブの支援員さんも大変です。止めようとすればまた暴れ、支援員さんがあざだらけです。

ある日、所属する学童クラブから呼ばれました。曰く、「運営組織で決まったので、もう、あなたのお子さんには対処できません。退所してください」とのこと。

学童クラブに通えなければ、我が子の帰宅に合わせて早帰りしなければなりません。されど、働けねば、生きてはいけず。はて、どうしたものか…。



・・・以上のお話はフィクションですが、実際に起きていることをいくつかつなぎ合わせた話です。横須賀市の学童クラブは全て、民設・民営です。保護者や、地域のかたの協力のもと、任意団体の協議会が運営している場所も少なくありません。そういった民営の会が、発達に偏りのある子を、「これ以上この子を受け入れることは、うちのクラブでは難しい」と判断してしまうことは、責められてはいけないと思います。運営上、安全管理をする必要があるので、プロの目でそう判断したのであれば、そうなのだと思います。



けれども、排除されてしまったその子は、どこに行けばいいんでしょうか?その子だけではなく、その親御さんは、どうすればいいんでしょうか?



「社会的包摂 social inclusion」なる言葉があります。1970年代のフランスで、戦後の好景気が終わり、何らかの形で社会から取り残された人々が生まれた現状を社会事業担当大臣ルノワール氏が「社会的排除 social exclusion」を称し指摘したのが始まりと言われます。社会的に逸脱した若者・障害者・高齢者などが、新しい形の貧困として指摘されたころです。社会的包摂は、そうした旧来の「単に絶対的貧困を金銭給付で救済しさえすればよい」といった救済では立ち行かなくなった社会に対して、「さまざまなリスクを抱える諸個人が社会へと再び参入できるよう (※1) 」働きかける考え方です。



この場合、そのお子さんの放課後ケアに対して、発達障害児に対応できる専門的ケアを受けられる民間施設に行ってもらうための金銭給付をする方法も、確かに政策としてはアリだと思います。発達障害(LD,ADHD,高機能自閉症等)の可能性のある児童生徒は6.5%程度(※2)と推計されており、横須賀市内の小学生児童数が18,618名(※3)で、多動の子に対応するよう考えても1,000名は超えないので、財源を確保できるかもしれません。けれど、それでいいのでしょうか? 発達に偏りはあれど、他の子はその子を「たまに暴れたくなる性格」といった具合に受け入れている中で、その子をその地域の学童クラブから引き離してもいいものなのでしょうか?



ただ、「かわいそうだから受け入れましょうよ!」といったところで、発達の偏りに対して、現実的で、専門的な支援体制が無ければ、その子も親も孤立する一方で、支援員さんもあざだらけになる一方です。本当に、現在の制度は、その子やその親御さんを受け入れるために、社会全体がその子の特性やそのご家族の事情について理解を深めつつ、適切なサポートが受けられる制度になっているんでしょうか?



今日、学童クラブを見学させてもらった際に伺ったお話に、複雑な思いでした。

(なお、今日お邪魔した学童クラブは、小学校・学童クラブ・保護者の素晴らしい連携体制ができていましたよ!)



※1:「現代社会における社会的排除のメカニズム」樋口明彦,p5

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsr1950/55/1/55_1_2/_pdf



※2:「今後の放課後等の教育支援の在り方に関するワーキンググループ最終取りまとめ」平成27年3月、文部科学省生涯学習政策局社会教育課

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/03/16/1355830_1.pdf



※3:「平成29年5月1日現在横須賀市立学校児童・生徒・学級数一覧」横須賀市教育委員会事務局教育総務部総務課

https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/8110/tyousa/documents/20170501.pdf

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